会 期
2007年4月10日(火) 〜 7月8日(日)
(会期中展示替あり)
休館日=毎週月曜日
(但し、祝日の場合は翌日休館)
開館時間 平日 11:00〜18:00 (入館は閉館の15分前まで)
会 場 旧新橋停車場「鉄道歴史展示室」
入場料 無料
千代紙いろいろ
【内 容】
日本橋にある“はいばら”は、200年の歴史をもち、古くから和紙を扱ってきた老舗です。
明治に入ってからは、早くから国内向けに洋紙を扱い、また、海外に向けては美術品や紙製品の輸出に深く関わり、万国博覧会に出品を重ねました。
紙製品、なかでも千代紙は色彩鮮やかで美しく、維新以後需要の減ったとされる木版摺りの高級品を商いました。明治38年、川端玉章デザインの千代紙10種を売り出し、来客の余興として板摺職人の実演をして好評を得、また、大正7年には、イギリスの大使館で千代紙を作る創作風景をみせて大好評だったとの記述があります。
また、こうした“はいばら”製の千代紙は、今でもフランス・パリ装飾美術館、イギリス・ロンドンのV &A 美術館、グラスゴーのケルビングローブ博物館に大切に保管されていることが分かっています。
大震災や戦争の影響で、千代紙の版木は失われましたが、現在でも“はいばら”には当時の千代紙の見本帳や千代紙、絵師による下絵、絵文筒(封筒のこと)、ポチ袋などが残されています。
そのなかには夢二デザインの絵封筒なども含まれます。
また販売当時の絵半切の版木を、今回はじめて公開いたします。
また、のしの部分の現代風にいえばシール、折り畳むとのし袋が出来上がる木版画などは、当時の “紙の文化”の一端を垣間見せてくれます。
本展覧会では、選りすぐった木版刷りの千代紙、同時代にデザインされた短冊など、その魅惑の世界をご紹介します。
【出品作のご紹介】
(1) 千代紙 川端玉章 大図版は会期前半、小図版は後期のみの展示
川端玉章(かわばた・ぎょくしょう1842-1912)は東京美術学校で円山派の教授として教鞭をとり、帝室技芸員に任命された作家。
この図柄を含め、この玉章デザインの千代紙は、明治38年に10種類版行されたことが、このたび『技藝之友』という当時の工芸のための雑誌の掲載記事によって確認された。
また、見本帳によると、販売当時18銭の値段がつけられていたようだ。本展では同じ玉章デザインのはいばら製《川端玉章画 十二ヶ月 絵たんざく 第五編》も出品される。
(2) 千代紙〈菊花〉 絵師不明
これと同じ柄の千代紙や、また別のはいばら製の千代紙が現在でも海外の美術館に収蔵されている。
明治政府は、日本の産業発展のため、伝統工芸を積極的に海外に紹介していたことが分かっている。
この柄の千代紙は、明治11年に明治政府が文物交換のために送ったなかの一枚と推測される。また、千代紙の老舗・いせ辰にも似た柄があるが、それは明治の巨匠、河鍋暁斎がデザインとされる。また、明治期のはいばらの当主と河鍋暁斎は関わりが深かったことが当時の『暁斎日記』によって明らかとなっている。
(3) 《柴田是真画 十二ヶ月 絵短冊 第九編》より
柴田是真(1807-1891)は絵画、蒔絵、漆絵と手がけ、明治期には内外の博覧会で次々に受章し、また、一派を築いた。明治23(1890)年には帝室技芸員に任命された。
是真とはいばらの当主とは懇意の仲で、はいばらでは当時、是真や一派による図柄の商品を数多く販売、作品も数多く購入した。また是真や一派の作品をはいばらから博覧会に出品することも多かった。
また、明治期はもちろん、その図柄は昭和になっても人気が高かったらしく、是真の図柄が木版商品として売り出されていた。この短冊は、おそらく明治後期に販売された短冊であろう。保存状態が大変よく、美しい色彩が目をひく。写真は左図が3月しだれ桜に燕、右図が5月鍾馗。
(4) 絵封筒〈雪の結晶〉 伊藤綾春 会期後半のみ展示
はいばら製と見える。
明治、大正期には封筒を自分で折ったものであり、この状態で販売されたものだろう。赤い実、緑の葉の上に白を残して雪、さらに銀で雪の結晶をあらわし、あわい水色で流水があわく表現され、美しく、上品な柄である。
この封筒をデザインした伊藤綾春(1881-1932)については、現在、余りよく分かっていない。古典的な図柄から、西洋風を加味した美しい図柄のはいばら製の商品を数多く手がけたようである。はいばらには綾春の旅行の写生帳などの資料が沢山残されている。
(5) 版画(千代紙)〈葡萄〉 竹久夢二
大正3年10月に開店した日本橋呉服橋近くの絵草紙店「港屋」。
夢二とその妻たまきが開いたもので、夢二デザインの絵封筒、カードなどが販売され、人気を博したという。
本展では、デザインの仕事でも人気を博した夢二による版画(千代紙)や封筒の数々を紹介する。夢二は、はいばらで紙を買い求めていたことが分かっており、はいばらにとっての客であり、デザインの依頼も受けていたことが分かる。
千代紙いろいろ
とうきょうすてーしょんぎゃらりー
東京ステーションギャラリーで、行われています。
東京ステーションギャラリー
東京駅構内にあるアートギャラリー。重圧な内装は、明治時代に建てられたレンガ造りの駅舎を再利用したものである。絵画のほか彫刻など幅広いジャンルに意欲的な展覧会を行っている。
住 所 千代田区丸の内1-9-1
最寄駅 東京駅
JR、地下鉄丸ノ内線東京駅丸の内中央口からすぐ
美味しいコーヒー・ブルックス