禅僧がつくりだした「生麸」
千年の古都「京都」の禅寺で僧達が作り出した生麸は豆腐・湯葉とならんで、貴重な植物性タンパク質でありました。動物性の食品を使わない精進料理には欠かせない、健康を維持する大切な蛋白質です。
小麦粉からできる生麸、大豆からできる豆腐・湯葉、いずれも植物性タンパク質です。
これらは低カロリーで消化が良く、古くから日本人になじんだ、正に健康食品です。生麸は、豆腐・湯葉ほどポピュラーではありません。料理のバリエーションが少ないせいか、あまりお目にかかりません。しかしながら餡を包んだ和菓子となって初めて、気軽に、食べやすく成りました。豆腐・湯葉は菓子にはなじみませんが、逆に生麸は饅頭となって身近になりました。
生麩まんじゅう(なまふまんじゅう)
言葉にならない、生麸の微妙な味わい
京都の食べ物というものは、味のはっきりしない、薄味の、洗練されたというか、そんな食べ物が多いです。
豆腐・湯葉もしかり。水っぽいが、しっかりとした素材も持つ味が美味しいと言われます。生麸もそんな、正にみずみずしい(瑞々しい)味わいそのもので、糖分も塩分も加えない、生成りの味です。
生麸のタンパクを生グルテンと言います。
その生グルテンを一晩ずーッと地下水を流し放して晒して柔らくし、糯米の粉を合わせます。グルテンの扱いは難しく、なかなか一定のコシ・柔らかさになりません。永年の勘が必要な部分です。ツルッとしたなめらかさと、生麸だけのこの風味。生グルテンだから感じるコシと歯ぎれ、フッと香る青海苔。洗練された、みずみずしい、ヘルシーな「現代和菓子」とです。
漉し餡が良くわかる、生麸
生麸まんじゅうは以前より京都の麩屋さんでのみ、つくられて来ました。
従来の麩屋さんの饅頭と比べちがうのは、餅にコシがあり葉にくっつかないことです。
料理中心の生麸づくりと、当店のような和菓子の生麸まんじゅうと、もっとも違う点は中の漉し餡(こしあん)です。
生麸も漉し餡づくりも水が大量に要ります。
当初から水にこだわったのは、この二つのためです。粒あんはどの店でも炊きますが漉し餡(こしあん)は排水の関係もあり専門業者から仕入れがほとんどです。
漉し餡づくりは和菓子店の生命です。当店では生麸まんじゅうを始め、漉し餡製品が多いのは、原料から製餡まで自前で選び、工夫してつくる故に、舌に感じる美味しい漉し餡が出来、評判をいただいているからこそです。
近年、類似品が出回っております。
生グルテン(小麦タンパク)から作るから生麸まんじゅうはおいしいものですが、近年グルテンを熱風乾燥してミックス粉として業界に販売されており、これを使って手軽に夏の一品として売るお店があります。つるっとした舌触り、独特のなめらかさ等の風味が全く違います。
当店の看板商品です、生麸まんじゅう
開店以来10年余り、この生麸まんじゅうを看板にきました。お菓子の種類をあまり持たずに、難しいといわれる生麸まんじゅうに取り組み、今や生麸まんじゅうが京都でも人気の高いお菓子になりつつあります。
生麩まんじゅう(なまふまんじゅう)
原材料:小麦グルテン・餅粉・砂糖・小豆・糸青のり
生麩まんじゅう(なまふまんじゅう)